◆ 刀談 ◆
上杉謙信さまの愛刀がこの太刀、姫鶴一文字（ひめつるいちもんじ）です。鎌倉時代の初期、備前国（びぜんのくに）の刀工一派、福岡一文字の名品のひとつで、黒漆合口打刀拵（くろうるし あいくち うちがたなこしらえ）が付属しております。合口とは鐔（つば）がない造りで上杉家の刀剣にはよく見られるものですね。
ある時、この太刀を謙信さまが研ぎ師に短く磨り上げるよう命じたところ、美しい姫君が研ぎ師の夢の中に現れ「切らないでください」と懇願したそうなのです。翌日も夢に現れ、研ぎ師が名を聞いてみると「鶴と申します」と答えたとのこと。結局、この不思議な夢により太刀の磨り上げは中止されたのでした。夢に現れた姫君が名前の由来ですね。
姫鶴一文字は一度も実戦で使われたことがないとも言われているのですが、磨り上げを中止してくれた謙信さまを災厄から遠ざけていたのかもしれませんね。でも、1588年に上杉家の方が採った刀身の型と現在の刀身を比べてみると、なんと2センチほど短くなっているようなんですよ…！ 上杉家のご当主の誰かが磨り上げたらしいのですが…。
